山ねこ拝

感想つれづれ。飛び道具は持たないでお入りください。

とびどぐもたないでくなさい。山ねこ 拝

Facebookは長文が向かないなあと思いつつ、絵のことを書いていると、どうしても長くなってしまう。そこで今さらなのは承知の上で、展覧会とかの忘備もかねてブログを始めてみた。
 
それで、ぼんやりと、山ねこのことを考えていた。
賢治の作品の登場人物(猫だけれど)で、山猫と言えば、『注文の多い料理店』をあげるだろう。でも実はもう一作、山猫の出てくる話がある。『どんぐりと山猫』という短編である。この愛らしいお話は、ある土曜の夕方、主人公のもとに、こんなはがきが届くところから始まる。
 
 
 かねた一郎さま 九月十九日

 あなたは、ごきげんよろしいほで、けっこです。
 あした、めんどなさいばんしますから、おいで
 んなさい。とびどぐもたないでくなさい。
                山ねこ 拝

 
 
一般的に山猫がどのような手紙を書くのか知らないが、それにしても唐突な裁判への呼び出し文である。文章がまるでなっていないのは、まあ山猫だから100歩譲るとして、「とびどぐもたないでください」とは、あまりにストレート過ぎるお願いではないか。かと思うと最後は『山ねこ拝』ときっちり結ばれており、失礼なのか律儀なのか良く分からない。そのアンバランスさが可愛らしく、ニヤニヤしてしまう。

そして、よくよく考えれば、山猫であろうが人であろうが、誰かに初めて会う時にはどんな意味でも“飛び道具”は持たないで行くべきなのだ。読み返すうちにそんな示唆までつい読み取ってしまうのが山猫の智略のうちなのかもしれぬ。
 
「めんどなさいばん」が何なのか、一郎がどのように活躍するのか、果たして一郎は帰ってこれるのか。未読の方はぜひ。小作なので、青空文庫でさらりと読める。秋の里山の描写も、絵本のように美しい。
 
青空文庫で読めます〜「どんぐりと山猫」