たまお(ニワシドリ)の日記

感想つれづれ。飛び道具は持たないでお入りください。

「雨」をお題とした名コピーライターたちの作品集である[書評]雨のことば辞典/講談社学術文庫

白い花が雨で濡れ、茶色く腐っていく。 「卯の花腐たし(うのはなくたし)」という、春の雨を表す言葉があるのを知ったのはいつだったか。季語を調べていたときのことだったと思います。腐らせるというネガティヴなことばのはずなのに、なぜか美しいことばだ…

彼女から100年後の世界を生きる私たちは、「自分ひとりの部屋」を手に入れたのか?[書評]自分ひとりの部屋(ヴァージニア・ウルフ)

『自分ひとりの部屋』…このタイトルに惹かれて買いましたが、読むうちにどんどん惹きこまれてしまいました。読み終わると「部屋」の意味するところが変わってしまうほどに。 作者のウルフは今から100年前のイギリスの女性作家です。『ダロウェイ夫人』『灯台…

自然と一体となって生きるのは、もやは失われた幸福なのか[書評]夏の朝の成層圏(池澤夏樹)

お題「好きな作家」 わたしがもっとも好きな作家、池澤夏樹氏、39歳のときのデビュー作です。ずいぶんとひさしぶりに読み返して、あらためて紹介したくなりました。30年前の著書ですが、まったく古さはありません。現代社会への深い内省が、みずみずしい自然…

NY旅行中に軽い気持ちで「SLEEP NO MORE」を見に行ったら、魂を持っていかれた話[導入篇]

NYですごいものを見てきてしまいました。 さてここは、開設してからエントリー3つで終わっていた私のブログ。 まさに…、うつくしき『ザ・3日坊主』。ほんとうに3回しか更新されてない。 人間、いやわたしの意思の弱さを可視化し、世間に晒すこと2年。もはや…

川上未映子新訳『たけくらべ』〜恋する者の鈍さと、される者の無関心

池澤夏樹さん個人編集の『日本文学全集』もついに3冊目に。 ※名作なので今さら過ぎる感じもありますが、ちょっとネタバレしています。 川上未映子氏による、樋口一葉『たけくらべ』の現代口語訳です。江戸情緒を残しながら明治へと移り変わる影絵のような花…

燕子花であって、燕子花でないものー尾形光琳『燕子花図屏風』に見る抽象性

尾形光琳300年忌特別記念展@根津美術館、行ってきました。 その感想を書く前に。 最初に、燕子花(カキツバタ)図をみたときの気持ちを記しておきたいと思う。 2011年に根津美術館で、はじめて尾形光琳の『燕子花図屏風』を見た。なんといっても国宝…

とびどぐもたないでくなさい。山ねこ 拝

Facebookは長文が向かないなあと思いつつ、絵のことを書いていると、どうしても長くなってしまう。そこで今さらなのは承知の上で、展覧会とかの忘備もかねてブログを始めてみた。 それで、ぼんやりと、山ねこのことを考えていた。 賢治の作品の登場人物(猫…